簿記あれこれ

(2008.1.29)

ここでは、簿記の考え方や用語を手短に書いてみます。企業会計は複雑ですが、家計簿を付けるのに必要な範囲では大したことはありません。

儲かることと財産

まずは、儲かった/損をした、ということについて書いてみます。

よくある家計簿は現金や預金の増減(入出金)を付けていきます。しかし、現金が増えたからといって、例えばお金を借りたことによる収入だと、儲かったとは言わないでしょう。

直感的には、返さなくてもいいような入金があったときに儲かった、といいます。

シンプルWeb家計簿、それからその基礎となっている簿記では、これを整理して、財産が増えたときに儲かった、と考えます。財産は、

財産 = 正の財産 - 負の財産
と分解します。正の財産は、例えば、
  • 現金・預金
  • 株式、外貨預金
  • ・・・

負の財産は、例えば、このようなものです; いずれも何らかの義務です。

  • クレジットカードの未払い
  • 住宅ローン、自動車ローンなど

給料を受け取ったとき、それは返さなくてもいいものですから、単純に正の財産(現金・預金)が増えます。だから儲かった、です。クレジットカードで買い物をしたとき、現金は減りませんが、翌月には引き落とされるのですから、買い物をしたときに負の財産が増えた (=正味の財産が減った)、と考えます。

収入・支出と財産

簿記では、財産をバスタブに見立てます。

水を足す蛇口と排水口があります。また、今、バスタブには水が貯まっています。

バスタブに貯まっている水の量がその時の財産です。また、バスタブに流れ込む水が収入、排水が支出です。

簿記では金額で表します。

それぞれの量を測るとき、財産はある時点ある時点で、収入・支出は期間で集計します。例えば、財産は1月末現在ではどうか、収入・支出は1月1日から31日までの合計ではどうか、と見ます。

財産のようにある時点で測るものをストック情報、収入などのように期間で測るものをフロー情報といいます。

財産を増やそうと思うと、次のいずれかしかないことが分かります。

  • 収入を支出より増やす
  • 支出を収入より減らす

どのようにして増やすか、は別ページで。

簿記の用語

正の財産、負の財産、(正味の)財産、収入、支出が出てきました。簿記では次の用語を使います。

  • 正の財産・・・資産
  • 負の財産・・・負債
  • 財産 ・・・純資産
  • 収入 ・・・収益
  • 支出 ・・・費用

次の関係があります。

資産 - 負債 = 純資産

収益 - 費用 + 純資産の直接変動 = 純資産 (の増減)

簿記が本来対象とする企業会計では、資産には機械装置、車両など自社にとって長期的に役立つものも含まれます。しかし、家計簿では、売り払うつもりでもない限り、そのようなものを資産とすべきではありません。

また、企業会計では、負債には、まだ義務として確定していないが発生する可能性が高いものも含めます。これも家計簿では無視していいでしょう。

財務諸表

毎日、入出金や資産・負債の増減を記録していきます。ある期間の結果を要約するとき、簿記では次の表を作成します。これらをあわせて財務諸表といいます。

  • 貸借対照表
  • 損益計算書
  • キャッシュフロー計算書
  • 純資産変動計算書 (株主資本等変動計算書)

貸借対照表が一番基本的な表で、内容はそれぞれ次のようになります。

貸借対照表
ある時点での財産を表示する。2列で作成するとき(対照表形式)は、左側に正の財産、右側に負の財産、その差し引きとして正味の財産を表示する。

表の左側と右側の合計は必ず一致する(純資産を差し引きで計算するので当然)ので、この表をバランスシートともいいます。

損益計算書
ある期間での収益と費用、その差し引きとしての純利益を表示する。
キャッシュフロー計算書
ある期間での資金の変動を表示する。通常は、損益計算書の利益を出発点として、資金の変動との違いを加算・減算していく。
純資産変動計算書
ある期間での純資産の変動を表示する。

貸借対照表だけがある時点での情報を表示し、それ以外の表は二つの貸借対照表のあいだの変動を示します。

Tips. (2008.2.1)

財務諸表の名前や内容はときどき変わります。例えば、IFRS (国際財務報告基準あるいは国際会計基準) では、2009年から、バランスシート (balance sheet) を財政状態計算書 (statement of financial position) と名称変更し、また、損益計算書を包括利益計算書 (statement of comprehensive income) と変更し、記載する内容も変えることが決まっています。IAS 1 (revised 2007)

IASPlus Home Page - News about International Financial Reporting

仕訳

簿記では入出金などを仕訳の形で記録します。例えば次のようになります。

日付借方貸方金額
2008.1.1現金 給料300,000
2008.1.2交際費現金10,000
2008.1.10株式現金50,000

借方、貸方は、単純に、左側・右側という意味です。

資産を左側に書くと増加、右側に書くと減少になります。逆に、負債、純資産(収益 - 費用)は,右側に書いたときが増加になります。費用は、収益から差し引くものなので、右側にマイナスで書いたとき(または左側にプラスで書いたとき)に増加です。

これらは貸借対照表での向きと同じです。

例えば現金が増加するとき、ローンのように返す義務があるものだと、右側に負債を書きます。現金(左側が増加)が増え、同時に負債(右側が増加)も増えます。

また、給料のように返す必要がないときは、右側は純資産(収益、費用でも)です。(例の1行目)

お金を使ったときは、現金が減るので右側に書きます。また、費用を左側に書きます。費用は純資産を増減させるので、結果として財産が減ります。(例の2行目)

例えば現金で株式を買った場合は、現金は減るので右側へ、いっぽう、正の財産である株式が増えるので左側へ書きます。(例の3行目)

ある時点での財産を出発点として、仕訳を重ねていくことで財産の増減を記録します。

リンク

簿記入門講座創業から決算まで
簿記検定3級水準の解説。
討議資料 「財務会計の概念フレームワーク」
日本の会計基準での、資産、負債、純資産などの定義。