[2018-09] 新規作成. [2019-11] Bison 3.4 で更新. [2023-01] Bison 3.8.
Bison は, いくつかの添付 skeleton かあるいは独自のものをベースに、それを書き換えることで構文解析器を生成する。その選び方。
各スケルトンでコードを生成させるサンプル: cpp-examples/bison at main · netsphere-labs/cpp-examples · GitHub
Bison 3.8 のスケルトンは, D言語, Java を措いておくと, 次のいずれか。これが、困ったことに, 意外と挙動と機能性が違う。できることが直交していない.
yacc.c
  lalr1.cc
  glr.c
  glr.cc
  glr.c. glr2.cc スケルトンが導入された。%skeleton "glr2.cc" で利用できる。
全体を表に整理すると、次になる。
| 言語 | push parser | table | pure (reentrant) | 宣言 | |
|---|---|---|---|---|---|
| yacc.c | Plain C | ✓ 可能 | LALR(1) | %define api.pure full | |
| lalr1.cc | C++ | × No | LALR(1) | 常に | |
| lalr1.d | D | ✓ Bison 3.8は可能. | LALR(1) | 常に | |
| lalr1.java | Java | ✓ Bison 3.0 | LALR(1) | 常に | |
| glr.c | Plain C | × No | Generalized LR (GLR) | true/false | %glr-parser | 
| glr.cc | C++ | × No | Generalized LR (GLR) | 常に | %glr-parser%language "c++" | 
yacc.c / lalr1.cc: %language "c++" 宣言 (またはコマンドラインオプション --language c++) でスケルトン lalr1.cc を選択する。bison に与える入力ファイルの拡張子で出力ソースコードの拡張子が変わるが、それとスケルトン選択とは別。入力ファイルを .yy にすると出力が .cc になるが、言語指定しなければ, スケルトンは yacc.c のまま。
GLR の場合も, %language で plain C / C++ を選ぶ。glr2.cc スケルトンは %skeleton で指名するしかない。ファイルの拡張子がスケルトン選択に影響しないのも同様。
Java 版は Bison 3.0 より push parser が可能。2020-05-03 ChangeLog より。
結論: push parser が必要な時は yacc.c. C++ なら, GLR にしたいときは glr.cc (または glr2.cc), そうでないなら lalr1.cc.
  
まず, push parser が必要かどうか。
push parser は、最後まで入力を読みきるのではなく, 一つ読み進めるごとにパーサから return するもの。ストリームパーサを作るときは, push parser にしたい。
もし push parser が必要なら, yacc.c 一択になる。C++ parser も GLR [C/C++] も, 実装できないことはないはずだが、Bison 3.0 では用意されていない。
%define api.push-pull both 宣言.
  
次は, GLR法が必要か.
.y ファイル内で %glr-parser を指定すると, Generalized LR (GLR) 法になる。
GLR法は, いくらでも必要なだけ分岐を保留し, 最終的に解決できる限り、あらゆる曖昧ではない文法を処理できる。LR(1) だと先読みが一つだけのためエラーになってしまうような reduce/reduce衝突も, 問題にならない。でも遅い。
別ページで実際に GLR法を試してみる; Bison: reduce/reduce衝突の解決法
glr.c スケルトンは pure (再入可能) parser にできない。%define api.pure true で pure になる。
GLR で C++ 版を選ぶには, ファイルの拡張子を .yy にするだけでは不十分。%language か, コマンドラインで -L c++ オプションを与えなければならない.
  
最後は, C++ parser にするかどうか.
Bison 3.0 がリリースされたのは 2013年7月. もうずいぶん経っている。新しく作るなら, C++ parser でいいように思う。
lalr1.cc であれ glr.cc, glr2.cc であれ, 'parser' class が生成される.